秋川会計経営レポート   201612

(マトランプ氏の勝利の背景)

アメリカの大統領選挙は,大方の予想に反しトランプ氏が勝利しました。女性初の大統領候補として注目されていたヒラリー・クリントン氏は、主要メディアが挙って支持し、ウオール街の財界から巨額の選挙資金を集めながら、無名の不動産屋トランプ氏に敗北したのです。こうした現象が何故おきたのか。国際ジャーナリスト堤未果氏は、「アメリカは2010年に企業献金の上限を撤廃し青天井にしました。その結果、大企業は巨額の献金を始めたのです。今、アメリカを本当に動かしているのは大統領ではなく、金で彼をバックアップしている大企業やウオール街の連中です。」民主国家では、法律を作る者が国の行方を左右します。オバマ・ケアと云われた「無保険者をゼロにする」との公約も、法律を書いたのは大統領でも政治家でもなく巨大な医療保険会社でした。その結果、国民の納めた医療費が巨大な医療産業に流れ込む仕組みとなったのです。ヒラリー氏は講演料が時給で2,000万円、この15年間にクリントン夫妻は講演料だけで7億7,000万円稼いでおり、ウオール街の大企業から巨額の献金も受けています。
 格差の広がるアメリカ社会で、トランプが既存の政治を厳しく批判して、職を失った白人労働者の支持をあつめたのが勝利の原動力でした。ただトランプ氏の公約はアメリカ経済をかえって低迷させ、失望に終わる可能性が大だと思われます。
 日本は敗戦から70年、アメリカの指示で外交も内政も進めてきました。しかし、これからは国民の知恵と責任で未来を選択しなくてはならなくなります。昭和20年8月15日に敗戦を迎えました。軍隊が解体され、財閥の解体、地主制度の廃止、指導者の公職追放など社会制度も国のそれまでの指導者も一掃されました。私たちは敗戦後の日本のように再び新しい国づくりに勇気をもって挑戦する時ではないでしょうか。
 

 (日本の革新は国民の手で)

京セラの創業者・稲盛和夫氏は、「日本の官僚独裁システムを国民の力で変えなくてはならない。」と云われます。戦前の日本では、官僚は国民の公僕ではなく天皇に使える者たちでした。戦争に敗れ連合軍が進駐したとき、司令長官のマッカーサーは、戦前からの「お上」意識を持ったままの官僚組織をそのまま残して、占領軍の権威を後ろ盾に国民を押さえつけることを始めたのです。戦後の荒廃した世の中、官僚たちは国民を信用せず、自分たちが日本の国の将来を考えて行くべきだと思うようになります。国民だけでなく国民が選んだ国会議員も信用しない官僚は自分たちで法律を作ってしまう。こうしたエセ民主主義は、どう見ても発展途上国のそのものです。
 また、堤氏によれば、日本は三権分立より根回しの国だと嘆いています。「国民に忘れ去られている事実に国会議員の仕事」があります。立法府の最大の仕事は、議会でヤジをとばすことでも駅前でお辞儀をすることでもありません。「法律を作ること」です。民主主義の柱である「三権分立」は、国会議員が法律を作り、司法がそれをチェックし、政府行政機関がそれを実行するという、このプロセスがあって初めて機能するものです。だが現実はどうなっているでしょうか。憲法でわざわざ分担を決めているのに、すべてを官僚がやっています。日本の法律の9割は、国会議員ではなく「閣法」と云って議員ではなく内閣が提出しています。その中身は官僚が書き、それを他の法律との整合性をチェックする「内閣法制局」で、これも官僚です。つまり官僚が作った法律を官僚がチェックする図になっており、三権分立という国家の本来の機能が骨抜きになってしまった時、もう一度軌道修正するために与えられた「羅針盤」である、憲法に立ち返るべきです。
 日本国憲法が制定されたとき、主権が天皇から国民に移り、「国民主権」という新しい考えが入れられました。戦前のように権力者が暴走するという悲劇を繰り返さないよう、国を動かす権力は「全体に奉仕する公務員としての国会議員だけに与え」、何かあれば国民はいつでもクビにできる「選挙で落選させる」仕組みにしたのです。憲法15条には、公務員を選定し、及びこれを罷免することは国民固有の権利であると記されています。その後、昭和23年に作られた「国家公務員法」で役人を公務員にすり替え、国民が選挙で落とせない役人を作ってしまったのです。
 アメリカでは、大統領と政権が変わるたびに、官僚を含めスタッフ全員を入れ替えています。同じメンバーが長く居続けることによって癒着の温床が作られることを防ぐ必要からです。戦後70年、戦争を知らない国民が増え、国会議員も戦後生まれの人が殆どになりました。憲法改正を声高に叫ぶ政治家も増えていますが、日本が再び戦前の悲劇を繰り返すことを許してはなりません。私たちは、憲法があの悲惨な戦争の体験の中から生まれたこと、そして混迷深まる世界の中で「非戦の誓い」を明記した憲法を持つ国は世界で日本しかありません。21世紀の混迷する世界を、安心して暮らせる世界に導く旗印として、この憲法を守っていかなければと思います。


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